女性専用車両で立ち飲みする女
思わず目を疑った。
帰宅ラッシュ時の女性専用車両で、せんべいをつまみに立ったままハイボール缶を飲む女が出現した。
始発駅から乗り込んだパンツスーツ姿の女は、座席には座らず車両の端の寄りかかれるスペースを確保すると、ビニール袋の中からせんべいを食べながら缶のハイボールを飲み始めた。
飲んでいる様子からすると、遠慮や恥ずかしさといった素ぶりは一切ない。
もしかしたら、いつものことなのかと思ってしまうような様子だった。
耳にはヘッドホン、缶を持つのと反対の手にはスマホ。
自分の咀嚼の音が聞こえないのか、せんべいを食べるクチャクチャとした音が響く。
髪は社会人にしてはギリギリかやや明るめの色で、長さは肩甲骨辺りまであり、茶色のヘアゴムで1つに束ねている。
決して念入りに手入れをしている毛先ではない。
メガネをかけ、ほとんど化粧はしてないようだ。
43歳前後というところだろうか。
右手の薬指には安そうな指輪をしている。
電車が発車する前から飲み始め、3駅目に着く頃にはすでに飲み終えていた。
その後、30分程で降りていった。
なぜ、電車を降りるまで待てないのか。
なぜ、公共交通機関にも関わらず飲み始めたのか。
昔、サラリーマンのオジサンが、帰りの電車で飲んでいるのを見かけたことはある。
現在もいるのかもしれないが、オジサンでさえ車内で飲んでいる姿に出くわすのは稀だ。
しかも、ここは女性専用車両。
世も末と本当に恐ろしくなった。